【ひび割れ、見つけたまま?】屋上防水の全4種類、プロが教える見分け方と間違えた時の損失額

ふと建物の屋上を見上げたとき、床にできた小さなひび割れや、塗装の膨れに気づくことがあるかもしれません。「いつからあったのだろう」「このまま放置して大丈夫だろうか」と、少し不安な気持ちになるのは当然のことです。そして、多くの方が次に考えるのは、「そもそも、この屋上の防水はどの種類なのだろう?」という疑問ではないでしょうか。実は、この疑問こそが、今後の建物の運命を左右する非常に重要な出発点となるのです。


なぜなら、屋上防水の種類を正確に把握することは、適切な改修工事を行うための基礎情報になるからです。例えば、既存の防水の種類が分からなければ、その上に重ねて補修できるのか、あるいは一度すべて剥がす必要があるのか、最適な工法を選ぶことができません。また、工法によって材料や手間が大きく異なるため、種類が特定できなければ、工事費用の正確な見積もりも出せないのです。


つまり、防水の種類を見分けることは、単なる知的好奇心を満たすためではありません。それは、あなたの貴重な資産である建物を、今後10年、20年と健全に維持していくための、最も合理的で、失敗のない計画を立てるための第一歩なのです。




■プロが解説!屋上防水、主要4工法の種類と見分け方

それでは、実際に屋上防水にはどのような種類があり、どこに注目すれば見分けやすいのでしょうか。建物の屋上でよく見られる代表的な4つの工法について、プロがどこを見ているのか、その視点からポイントを解説します。



・液体を塗って仕上げる「ウレタン防水」

最も普及している工法の一つです。一番の特徴は、現場で液体状のウレタン樹脂を塗り、化学反応で固めて防水の膜をつくる点にあります。そのため、つなぎ目のない、なめらかで美しい仕上がりになります。床面が平らで、シートを貼ったような継ぎ目が見当たらない場合、ウレタン防水の可能性が高いでしょう。色はグレーやグリーンが一般的です。液体を塗る工法なので、排水口の周りや、少し複雑な形をした部分にも、一体的にきれいに施工されていることが多いのも見分けるポイントです。



・大きなシートを貼り付ける「シート防水」

これは、工場で作られた塩化ビニル製やゴム製のシートを、接着剤や機械で固定していく工法です。床面をよく見ると、シートとシートのつなぎ目(幅10cm程度の重なり部分)が、まっすぐな線となって必ず存在します。この「継ぎ目」があるかどうかが、ウレタン防水との最大の違いです。塩ビシートは比較的硬く、日光を反射する明るいグレー色が多いです。一方、ゴムシートは伸縮性があり、黒っぽい色をしています。



・歴史と実績のある「アスファルト防水」

古くからある信頼性の高い工法で、黒いアスファルトを含んだシート状の材料を、熱で溶かしながら何層にも重ねて貼り付けていきます。表面は、防水層を守るために砂利が敷き詰められていたり、銀色の保護塗料が塗られていたりすることが多いです。見た目に重厚感があり、表面がゴツゴツしている、あるいは銀色に輝いている場合は、アスファルト防水と考えてよいでしょう。



・硬くて軽い「FRP防水」

ガラス繊維で強化されたプラスチック(FRP)を使った工法です。非常に硬くて丈夫なのが特徴で、表面を軽く叩いてみると、コンコンと硬質な音がします。つなぎ目のない仕上がりはウレタン防水と似ていますが、FRP防水の方がより硬い感触です。主にベランダやバルコニーで使われることが多いですが、軽量であるため木造住宅の屋上などにも採用されます。




■自己判断は危険!防水種類の見分け方を間違える3つの落とし穴

ここまで見分け方のポイントをお伝えしてきましたが、「おそらく、うちの屋上はウレタン防水だろう」とご自身で判断するのは、少し待ってください。実は、見た目だけで防水の種類を正確に特定するのは、専門家でも慎重になるほど難しい作業なのです。なぜなら、長年の紫外線や雨風にさらされることで、どの工法も見た目が似てきたり、過去の補修で別の材料が上塗りされたりしていることがあるからです。もし、間違った判断のまま話を進めてしまうと、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。



・落とし穴1:不適切な補修で、かえって劣化が進む

例えば、ウレタン防水だと思って、ひび割れ部分に市販の補修材を塗ったとします。しかし、もし下地が特定のシート防水だった場合、補修材との相性が悪く、すぐに剥がれてしまうことがあります。さらに悪いことに、その補修材が原因で、シート自体を傷めてしまう可能性すらあるのです。良かれと思って行った処置が、雨水の新たな侵入口をつくりだし、かえって建物の劣化を早めてしまうことになりかねません。



・落とし穴2:相性の悪い材料で、防水層が機能しなくなる

本格的な改修工事で、既存の防水層の上に新しい防水層を重ねる「かぶせ工法」を行う際、この見立ての違いは致命的になります。防水材にはそれぞれ相性があり、相性の悪い材料を重ねてしまうと、新しい防水層がうまく密着しなかったり、化学反応を起こして縮んだり膨れたりすることがあります。これでは、高い費用をかけて工事をしても、防水層としての役割をまったく果たせません。



・落とし穴3:二度手間で、結局は費用が割高になる

もし間違った工法で工事を進め、数年で再び雨漏りが発生してしまったらどうなるでしょうか。当然、その手直しにはまた費用がかかります。最悪の場合、一度目の工事をすべて剥がしてから、もう一度正しい工法でやり直すことになります。そうなると、本来は不要だった撤去費用まで発生し、最初から専門家に任せていた場合よりも、はるかに高額な出費となってしまうのです。このように、最初の「見立て」の誤りが、最終的に大きな経済的損失へと繋がってしまうのです。




■既存の防水層を活かす?撤去する?種類によって変わる改修方法

防水の種類や劣化状態を正確に把握することがなぜ重要なのか。それは、今後の改修方法が大きく「2つの選択肢」に分かれるからです。一つは既存の防水層を活かす「かぶせ工法」、もう一つは一度すべてを剥がす「撤去更新工法」です。



・費用と工期を抑えられる「かぶせ工法」

これは、現在の防水層の上に、新しい防水層を重ねて施工する方法です。最大の利点は、既存の層を剥がす手間と廃材の処分費用がかからないため、コストを抑えられ、工事期間も短縮できる点にあります。ただし、この工法が選択できるのは、既存の防水層がまだしっかりと下地に密着しており、劣化が表面的な場合に限られます。もし、防水層の下で雨水が回り、下地が傷んでいる状態の上から蓋をするように施工してしまうと、内部で劣化が進行し、数年で再び問題が発生する可能性があります。



・根本的な解決を目指す「撤去更新工法」

こちらは、既存の防水層をすべてきれいに剥がしてから、新しい防水層を施工する方法です。費用と工期はかかりますが、下地の状態を直接確認し、傷んでいる部分があれば補修した上で工事を進められるため、最も確実で安心感の高い方法と言えます。すでに雨漏りが発生している場合や、防水層の膨れや浮きが広範囲に見られる場合は、こちらの工法が選ばれることが多くなります。建物をゼロの状態に戻して、改めて最適な防水を施すことで、その後の長期間にわたる安心を手に入れることができます。


どちらの工法が最適なのか。その判断は、表面的な見た目だけでは極めて困難です。専門家が防水層の種類を特定し、さらに劣化の進行度合いを深く診断して初めて、ご自身の建物にとって最も賢明な選択肢が見えてくるのです。




■【モデルケース】優良企業は「診断力」で見分ける

では、その重要な「見立て」を、安心して任せられる専門業者とは、どのような会社なのでしょうか。価格の安さや知名度だけで選ぶのではなく、本当に注目すべきは、工事契約前の「診断」に対する姿勢です。


例えば、屋上の状態を少し見ただけで、「これはウレタン防水でやりましょう」と、すぐに特定の工法だけを勧めてくるような場合は、少し注意が必要かもしれません。なぜなら、本当に建物のことを考えるならば、もっと深く建物の状態を知ろうとするはずだからです。


多くの優良な企業では、診断のプロセスを非常に大切にしています。まず、いつ頃建てられた建物なのか、過去にどのような修繕を行ってきたのか、といった建物の「履歴書」を丁寧にヒアリングします。その上で現地に赴き、ただ目で見るだけでなく、打診棒という道具で壁や床を軽く叩き、その音の違いで内部の浮きや剥がれがないかを確認します。場合によっては、専用の機器を使ってコンクリート内部の水分量を計測するなど、客観的なデータに基づいて状態を把握しようと努めます。


そして最も重要なのが、その診断結果の報告です。調査で撮影した写真などを見せながら、専門用語を使わずに、「なぜこのような劣化が起きているのか」「放置すると将来どうなる可能性があるのか」を分かりやすく説明してくれます。その上で、「予算を重視するならこのプラン」「長期的な耐久性を求めるならこちらのプラン」というように、複数の選択肢をそれぞれの利点と欠点と共に提示し、最終的な判断を委ねてくれるのです。


このように、工事そのものの技術力はもちろんのこと、その前段階である診断と提案に真摯に向き合う姿勢こそが、建物の将来を安心して任せられるパートナーを見極めるための、何よりの判断基準となるでしょう。


より詳しい工法の種類や特徴については、こちらのページも参考にしてください。

https://www.os-giken.jp/waterproof




■まとめ:最適な防水工事は、正確な「現状把握」から始まる


屋上のひび割れや膨れは、建物が私たちに発している重要な不調のサインです。そのサインを見逃さず、「うちの屋上はどの防水だろう?」と考え始めたことは、建物を大切に思うからこその、素晴らしい一歩と言えるでしょう。


この記事では、代表的な防水の種類とその見分け方、そして自己判断に潜むリスクについてお伝えしてきました。防水工事は、決して安い買い物ではありません。だからこそ、最初のボタンの掛け違い、つまり「現状把握」の誤りは、絶対に避けなければなりません。


信頼できる専門家は、いわば「建物の主治医」のような存在です。私たちの目には見えない部分まで丁寧に診察し、建物の状態を正確に診断した上で、最適な治療法(改修プラン)を提案してくれます。大切な資産を少しでも長く、健全に維持していくためには、このような頼れるパートナーを見つけることが何よりも大切です。


この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、後悔のない防水工事を実現するための一助となれば幸いです。まずは専門家の診断を受け、ご自身の建物の「今」を正確に知ることから始めてみてはいかがでしょうか。


ご不明な点やご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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